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セキュリティは特許より優先するか?


セキュリティホールメモ小島さんからの再度コメントをいただいた。

「特定のウイルスを防ぐための特定の技術 (代替技術なし) の場合であっても話は同じだと思います。リアルウイルスと戦うための技術 (薬) の世界では何年も前から問題になってますよね。その特許を override でき得るような法体系になっていれば別ですが。」

私は前提として、本来どうあるべきか、どうあって欲しいかという視点で考えるようにしている。既存の特許法の枠組みで云々ではなくて、その法律がそのまま放置された場合にどういう不具合が起こりうるか、現行法が実情に適合しているかという点も含めて考える必要があると思う。

だからWinnyでの情報漏洩のときと同様に、「法律がこうなっているのだからしかたない」、「今までもあった問題だからしかたない」と看過するのではなくて、本当にそれが何かまずいのであれば法改正や特別な措置も含めアクションに結びつけるための問題提起を積極的にすべきだと思う。

あるいは社会のコンセンサスとして、情報セキュリティについても特許制度の枠組みを活用すべきということになるなら、各企業や研究者はそのための対応をとっていくことになるだろう。セキュリティに限らずソフトウェアに関する特許やオープンソースと特許に関してはこれまでもいろいろと問題が起こってきた。今後情報セキュリティに関しても大きな問題が起こらないとはかぎらない。

小島さんがリンクで示した「人命は特許に優先する:危機に晒される数百万人の命 -安価な医薬品へのアクセスを守るための署名のお願い- (国境なき医師団, 2006.12.20)」のような事態が存在するのであれば誰かがそういった問題を提起する必要があるのと同様だ。

今回のケースではセキュリティベンダーだって企業なのだから、新技術開発のインセンティブが必要だ、それによって技術革新が進むのだという考え方はありうる。一方で既存の制度枠組みが公共のセキュリティの向上を阻害するような事態が生起しうるなら一定の「override」するルールも含めて考える価値はあると思う。

ちなみに、今回の件については個人的にネットエージェントの杉浦さんとも話をしており、それほど深刻な状況にはないと感じていることを付記しておく。

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  1. Arain
    2007 年 2 月 19 日 22:34 | #1

    基本的なニーズが保護されるのは、公共の福祉ですね。
    まぁ、特許庁がどう判断するかは知りませんが、公共の福祉に反する目的で特許を利用するというのは、あんまり良い感じしないなぁと思います。
    企業に利益が必要なのはわかるんですけれども、新しい技術の創造において不利益というか、特許で守るべき対象ではないような。

  2. keiji
    2007 年 2 月 21 日 08:53 | #2

    Arainさん、コメントありがとうございます。

    そうですね。私も心情的にはどうもすっきりしません。人の命に関わる医薬品でも同じような問題があるのはちょっと残念なことです。公共性が高い特許は国が買い取るなどのしくみがあってもいいような気もしますね。

  3. でかいの
    2007 年 2 月 24 日 10:59 | #3

    知財権と公共の利益が相反するケースという観点で、結構ありがちの例だと思います。
    しかし、特許制度はこのような事態を多く経験しておりその対策として多くの国で強制実施権が規定されています。それにより公共の不利益にもかかわらず他者にその発明を実施させないということは出来ないようになっているので心配ないでしょう。

    むしろ、工業製品に適用される知財権として歴史の浅い著作権の方が不安要素が大きいと私は思います。

    「セキュリティは著作権より優先するか?」

    このような危機意識、なぜかソフト屋さんはあまりお持ちではないようですが、こっちの方がかなり危険度が高いと思います。著作権には特許のような強制実施権の規定がありませんし公開する義務もありませんから。たとえば、ソースコードの開示がどれほど公共の利益に寄与するとしてもそれを強制することはできません。これは危険ではないのでしょうか?

    現実として今の社会ではセキュリティソフトに当然のように著作権の保護が与えられているわけです。これに比べれば、セキュリティ技術に特許権が与えられたからといってたいした問題ではないと思うのですがいかがでしょうか?
    特許は追試できる程度の技術情報が必ず公開されているわけですし、保護期間もせいぜい20年と著作権のようにダラダラ続く保護期間に比べたら圧倒的に短いのですから。

  4. Arain
    2007 年 3 月 1 日 22:34 | #4

    確かに、優れた作品・技術・発見などは、人類共通の財産であり、おおいに広まってしかるべきと思います。
    ただまぁ、ソースコードの開示は強制するものではないんじゃないですかね。オープンソースはすばらしい考え方だと思いますけど、開示しないことは別に悪くない。
    あと、僕は著作権については、別のモデルが台頭することによって、いずれ消滅するような気がしますね。
    現状でも、中古屋とかライセンス契約というビジネスモデルは著作権とは別のところに存在すると思います。

  5. keiji
    2007 年 3 月 3 日 23:43 | #5

    「でかいの」さん「Arain」さんコメントありがとうございました。確かに著作権もセキュリティに関して問題になるケースはあるように思いますが、ソースの開示と著作権の問題は直接は関係しないように思います。
    ソースの開示=著作権の放棄ではないはずなので

    ただソースコードの開示が即、安全なソフトウェアの実現につながるかというと疑問もあります。誰も検証しておらずテストもされていないオープンソースはおそらく、責任を持って工程管理とテストが行われている大企業によって提供されているクローズソースの方が一般の企業が利用する場合においては安心感があるのではないかと思います。

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