【書籍】神は妄想である―宗教との決別
「神は存在しない」を科学的に論証する野心作
この書籍は海外特に米国などで話題となったが、日本ではそれほど話題になっていないようだ。宗教というテーマは日本人にはあまりなじみがなく、一般には書店であまり手にとる気にならないのかもしれないし、この書籍で主張している「超自然的な意味での神は存在しない」は、無神論者が多い日本では、あまりに当たり前すぎるのかもしれない。
ブログの感想や書評などを読んでも割と辛口の評価が多いのだが、私はこの書籍を最新の科学理論を神の存在と絡めて紹介する科学的エンターテイメントとして楽しく読めた。宗教論、思想書あるいは科学書としてこの書籍をとらえれば突っ込みどころは多いのかもしれないが、この書籍の本質はそういうところとは違う。「本当に神は存在するのか」という小学生でも一度は考えたことがありそうな素朴な疑問(少なくとも日本人は)について、大の大人が、それも大学教員のポジションも持つ著者が、必死に論証をしようとし、それをまさに命がけで世界に発信しようとしているのだから、これが面白くないわけがない。この命がけという感覚が日本では実感をもって伝わりにくいかもしれないが、例えば、この本を日本で人前で読んでも、ふーん、小難しい話が好きな人だねと思われる程度だが、米国で人前でこの本を読むには身の危険の覚悟が必要である。気分はまさに「王様の耳はロバの耳!」なのである。
著者は誰にでもわかりやすく「つまり神は○○なのである」という断定的な書き方はしていないため、多くの読者が消化不良の印象を持つようである。実際かなり勢いに任せて書いた感があり、著者がこれまで「利己的な遺伝子」などの著作で主張するダーウィン主義の考え方をちりばめながらも、途中からはキリスト教に対する恨みつらみや聖書の矛盾点へのツッコミがグダグダと書かれている。
基本的には、これまでの著作と同様にダーウィン・マンセーな内容であり、いつもの調子で「人間による神の信仰」という事象を得意の進化論で「スパッ」と斬ってくれるのかなと期待するわけだが、この「スパッ」の切れ味がこれまでの著作ほど切れてなくてグダグダしているのが、辛口の評価につながったようだ。
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