【書籍】富の未来(Revolutionary Wealth) アルビン&ハイジ・トフラー
私が最初に読んだトフラー夫妻の著作は1991年の「パワーシフト」だった。何気なく手にしたその本には、刺激的な未来の姿が描かれており大変興奮したのを覚えている。パソコンはまだマニアのもので、インターネットは限られた研究者だけが使っていた当時、その本に書かれた未来社会は夢物語にも思えたが、多くが現実のものとなった。
学生だった私は知識が力の源泉となる未来の姿に思いを馳せ、授業の課題として将来の軍事・国際関係における知識と情報の役割の変化についてレポートをまとめた。その後いわゆる情報化の波によって、インターネットや携帯電話の普及など、社会や組織、我々のライフスタイルは急激に変化した。この間、私自身は全国のセンサー情報を集約し処理・判断した結果を航空機やミサイルなどのハードウェアとそれを操る人・組織に伝える兵器管制という業務を経験した後、軍事における情報化(RMA)、システムのオープン化とそれに関わる研究開発、情報技術を駆使し組織変革をはかり徹底した合理性を追求する外資系コンサルティングの世界、そしてまさに知識と情報が力の源泉となる情報セキュリティの世界、様々な技術と組織そして社会の変化に実際に関わることとなり、今振り返ると自分自身のキャリアの原点はトフラー氏の「パワーシフト」にあったようにも思える。
今回の「富の未来」は「パワーシフト」以来の15年ぶりの大作ということで著者らのこれまでの活動の集大成とも言える作品となっている。現在そして今後の社会において情報・知識が重要な役割を果たすというこれまでの基本路線を踏襲しつつ、今後さらに社会や技術の変化は加速し、組織の意思決定の速度、変化する能力がこれまで以上に重要となるとしている。確かに高度な情報処理や地球規模での知識の交換を容易に行うプラットフォームが整備された現在、それらを活用することによって様々な分野での進歩や変化が加速するという主張は感覚的にも理解できる。このような時代において、時間というものが経済学上重要な要素となり、企業では時間の経済価値を意識した戦略が求められる。
また、これまで経済学の枠組みで重視されなかった、家庭内での生産活動やボランティアなどの生産消費者にも焦点をあて、企業における労働を消費者自身に外部化するなど新たな経営アプローチに関するヒントも多く提供している。その他、遺伝子工学が石油産業に匹敵するエネルギー産業になるバイオ経済、高齢化問題に対する創造的対策など刺激に富んだ未来社会が描かれている。
やや概念的な記述が多く、ある程度前提知識がないと読みづらい部分もあるかもしれないが、広範な分野を扱っているので誰でも興味深いトピックをいくつか見つけることができるだろう。これまでの大きな社会の変化を予見してきたトフラー夫妻の新作だけに、社会、技術や経済などの方向性を捉え、今後の自分や組織のあり方についての長期的なビジョンを構築する上で大変参考になるだろう。
【書籍】
富の未来 上・下巻
A. トフラー (著), H. トフラー (著), 山岡 洋一 (翻訳)
講談社(2006/06/08)
各¥1,995 (税込)
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はじめまして。ふくちゃんと申します。
私も富の未来を読みました。本当に時代が変わろうとしているのを感じました。仰っておられるように生産消費という概念も大きな発見でした。
今、変わりつつある未来について考える時が来ていると感じています!
みんなでWEBにより変わる未来を予想し、それによって未来を創りだそうというブログを作っています。
是非、一緒に未来について考えましょう。
一度ちょっと遊びにきて、ご意見などいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
ふくちゃんさん
コメントありがとうございました。
サイトも拝見いたしました。とても充実したサイトですね。ちょくちょく参考にさせていただきます。
はじめまして。センと申します。
インターネットで'富の未来'について情報検索をしていましたけど、
偶然にこのブログについたんです。
'富の未来'はまだ読んでなかったですが、Kenjiさんの文を読んで、
週末は本屋に行くようにしました。
私も読んだ後、また来ます^^
富の未来 下巻
昨日からご紹介している富の未来。 下巻では、現在世界で起きていることを 地域ごとにフォーカスして述べています。 上巻で述べられていたことは、 「世…