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日本の大学院教育事情

 以前紹介したエントリーからちょっとした議論になっている。もともとは単なるblog向けの軽いネタとして取り上げただけの話だと思うが、厳しい意見も出ているようなので感じたことを書いてみる。

 そもそも日本の大学院教育と米国の大学院教育の位置づけは大きく異なる。日本では大学院は研究者養成の傾向が強く、米国は研究者養成に加えプロフェッショナル養成も大きな割合を占めている。米国大学院の一般的な講義は、一つの科目について週に90分程度の講義が2回か、3時間程度の講義が週に1回行われる。各講義の度にテキストや論文などを大量に読まされ数回の講義毎に関連する実習課題が出される。課題は講義時間以外に行うので相当の時間とエネルギーが授業のために費やされる。単なる座学だけではなく実際に自分の手を動かして勉強をするので実践的なスキルが身につく。

 博士課程であっても必修の授業などがありその成績も評価につながるので、研究がしたいからといって手を抜くことはできない。このような環境で研究者としてやっていくためには、ハードな授業をこなしつつ自分の研究を進めて行く必要があり、研究者として成功している人は本当に優秀な人が多い。頭だけではなく手も動かして仕事ができる。研究者としてのキャリアに興味がなくなればそのまま優秀なエンジニアとして通用するし、卒業生の市場での評価も高い。一方、その後教員として教える場合には、専門外の知識も持っているので幅広い科目を教えることができるし、社会の変化にも対応して新たな分野にも挑戦しやすく、踏み込んだ議論や教育も可能だ。

 「大学院生は研究者なんだから独力で知識を身につけていくべき。」というような意見もあるが、それなら大学院に行く意義は薄れるし、授業なんてのは研究を阻害する邪魔ものでしかないということになる。むしろ「研究で大変だろうから授業は手を抜いていていいんだよ。」というような甘いことを言っていて大丈夫なの?というのが、本来のポイントかと思う。

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  1. 2005 年 2 月 7 日 00:11 | #1

    確かに日本の大学院教育はアメリカと比べると寒いですね。ぜんぜん授業という点では、勉強した覚えないし、そもそも授業ってあったっけ状態…
    ここ4,5年の間に新設された大学院とかだと、従来よりは厳しくやっているみたいですが、まだまだですね。

  2. 2005 年 2 月 8 日 13:59 | #2

    実は私も偉そうなことは言えないのですが、こちらに来てみると、皆頑張っているので危機感は感じますね。
    日本人は少なくて、インド、韓国、中国、台湾、タイあたりの学生が頑張っています。

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