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企業、人間、国家の興亡を賭けたサイバー総力戦

2006 年 12 月 11 日 コメントはありません

まだAmazonに載っていないことでもっぱら話題の「ネット vs. リアルの衝突 誰がウェブ2.0を制するか」(佐々木俊尚さん著)の献本が届いた。

ウェブ2.0云々というのは出版社のマーケティングの都合だろうが、同新書の帯に書かれていたコピー「企業、人間、国家の興亡を賭けたサイバー総力戦」というのは、やりすぎ感はあるものの、壮大なハリウッド映画のキャッチみたいで気に入ってみた。

まだ正式発売前なのとまだ読み終わっていないため、内容については詳しく書かないが、インターネットによってもたらされる民主化とアナーキー化、とそれに対する国家権力による覇権化の衝突を、サミュエルハンティントンの「文明の衝突」になぞらえ、Winnyからデジタル家電、Web2.0まで興味深い切り口で今の時代を描いている。(NGNなども同じ文脈で捉えることもできるのだろう。このあたりは今後に期待か?)

佐々木氏はこれまでもネット系の様々な出来事について的確な描写と鋭い考察を示してきており、私が信頼するジャーナリストの一人である。今もなお本書に書かれた多くの事柄がリアルタイムで進行しており、さながら今の局面を紐解く上での参考図書としても使えそうだ。

佐々木さんありがとうございました。

【書籍】
「ネット vs. リアルの衝突 誰がウェブ2.0を制するか」(佐々木俊尚著)
文春新書
定価(税込) 840 円
ISBN 4-16-660546-1
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【書籍】ハッカーズ その侵入の手口、ケビン・ミトニック、ウィリアム・サイモン

2006 年 11 月 20 日 コメントはありません

本書はネットワーク不正侵入やクラッキングの実際をリアルに描いており、単にハッキングものの読み物としてだけではなく、ネットワーク管理や不正アクセス対策に取り組む技術者、情報セキュリティに関する研究者が攻撃者の視点から不正アクセスの実状を理解する上でも参考とすることができる。

多くのハッカー本やメディア報道がハッカー(クラッカー)を神格化し、天才的な少年がいかに高度なテクニックを駆使して軍事ネットワークの奥深くから国家秘密をいかにして盗み出すかといったようなストーリーを描きたがる一方で、本書はハッキング/クラッキングの現実を極めてリアルに描き出すことに努めている。共著者の一人であり自ら情報犯罪で投獄されたことで知られるケビン・ミトミック氏が誇張や捏造を排除するため自ら信頼性に高いハードルを設けて実施した取材をベースとしており、現実感の高い内容になっている点は評価したい。

特に不正侵入を行う攻撃者が管理者に見つかることを恐れビクビクしながら攻撃を行っていたり、いかに攻撃のハードルの高いシステムを避け、管理の杜撰な箇所を狙って攻撃をしかけてくるかなど、攻撃者側の視点での戦略がうまく描かれている。過去の事件を取り扱っているため内容は少し古くはなっているが、実在するツールや脆弱性について技術的な視点から触れられており、実際の内容に即したものとなっていると思われる。技術的な背景を理解している人なら、この攻撃はあの手口だななどと自分の知識と照らし合わせながら読むことができるだろう。

ハードウェア・ハッキング、ソーシャルエンジニアリング、ペネトレーションテストなど様々なハッキングのシナリオが延々とオムニバス形式で綴られており純粋な読み物としては単調な感もあるが、ドキュメンタリーとして捉えれば、現実のハッキングの裏側や攻撃者がどのような思考に基づき行動しているかなど、防御側にとっても学ぶべきところも多い。

■書籍

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ハッカーズ その侵入の手口 奴らは常識の斜め上を行く、ケビン・ミトニック (著), ウィリアム・サイモン (著), 峯村 利哉 (翻訳) 、インプレスジャパン、¥1,995 (税込)

※画像にはAmazonアソシエイト・プログラムのリンクが設定されています。
※インプレスジャパン様より当該書籍を献本いただきました。ありがとうございました。

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【書籍】富の未来(Revolutionary Wealth) アルビン&ハイジ・トフラー

2006 年 7 月 7 日 コメント 4 件

私が最初に読んだトフラー夫妻の著作は1991年の「パワーシフト」だった。何気なく手にしたその本には、刺激的な未来の姿が描かれており大変興奮したのを覚えている。パソコンはまだマニアのもので、インターネットは限られた研究者だけが使っていた当時、その本に書かれた未来社会は夢物語にも思えたが、多くが現実のものとなった。

学生だった私は知識が力の源泉となる未来の姿に思いを馳せ、授業の課題として将来の軍事・国際関係における知識と情報の役割の変化についてレポートをまとめた。その後いわゆる情報化の波によって、インターネットや携帯電話の普及など、社会や組織、我々のライフスタイルは急激に変化した。この間、私自身は全国のセンサー情報を集約し処理・判断した結果を航空機やミサイルなどのハードウェアとそれを操る人・組織に伝える兵器管制という業務を経験した後、軍事における情報化(RMA)、システムのオープン化とそれに関わる研究開発、情報技術を駆使し組織変革をはかり徹底した合理性を追求する外資系コンサルティングの世界、そしてまさに知識と情報が力の源泉となる情報セキュリティの世界、様々な技術と組織そして社会の変化に実際に関わることとなり、今振り返ると自分自身のキャリアの原点はトフラー氏の「パワーシフト」にあったようにも思える。

今回の「富の未来」は「パワーシフト」以来の15年ぶりの大作ということで著者らのこれまでの活動の集大成とも言える作品となっている。現在そして今後の社会において情報・知識が重要な役割を果たすというこれまでの基本路線を踏襲しつつ、今後さらに社会や技術の変化は加速し、組織の意思決定の速度、変化する能力がこれまで以上に重要となるとしている。確かに高度な情報処理や地球規模での知識の交換を容易に行うプラットフォームが整備された現在、それらを活用することによって様々な分野での進歩や変化が加速するという主張は感覚的にも理解できる。このような時代において、時間というものが経済学上重要な要素となり、企業では時間の経済価値を意識した戦略が求められる。

また、これまで経済学の枠組みで重視されなかった、家庭内での生産活動やボランティアなどの生産消費者にも焦点をあて、企業における労働を消費者自身に外部化するなど新たな経営アプローチに関するヒントも多く提供している。その他、遺伝子工学が石油産業に匹敵するエネルギー産業になるバイオ経済、高齢化問題に対する創造的対策など刺激に富んだ未来社会が描かれている。

やや概念的な記述が多く、ある程度前提知識がないと読みづらい部分もあるかもしれないが、広範な分野を扱っているので誰でも興味深いトピックをいくつか見つけることができるだろう。これまでの大きな社会の変化を予見してきたトフラー夫妻の新作だけに、社会、技術や経済などの方向性を捉え、今後の自分や組織のあり方についての長期的なビジョンを構築する上で大変参考になるだろう。

【書籍】
富の未来 上・下巻
A. トフラー (著), H. トフラー (著), 山岡 洋一 (翻訳)
講談社(2006/06/08)
各¥1,995 (税込)
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[書籍]ハッカー心を持つ人のためのOS X

2006 年 3 月 30 日 コメント 2 件

【書籍紹介:OS X for Hackers at Heart: The Apple of Every Hacker’s Eye】

最近すっかりWinnyのブログになってしまっているので、気分転換に違う話題を・・・。

セキュリティエンジニア達が書いたMac OS Xの書籍。OS Xにポートされているセキュリティツールのリストなども掲載されており、セキュリティの実務に携わっている人物が「Macの場合どうなの?」という時には重宝しそうだ。技術的にすごく深いところまで書いているわけではないが、セキュリティエンジニアがMac入門として読むには丁度良いだろう。セキュリティに限らないが、iPodのHD換装など各種Tipsが盛り込まれているので読み物としても楽しめる。実務を行う上で止むを得ないのだろうが、結局VirtualPCやWHAXをMacの上で動かしたりすることになってしまっているところは少し残念だ。

■OS X for Hackers at Heart: The Apple of Every Hacker’s Eye
(Syngress Media Inc)
Chris Hurley (著), Johnny Long (著), Preston Norvell (著), Tom Owad (著), Ken Caruso (編集)
価格: ¥6,090 (税込)

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